ザールビューティ~偶然が生んだ美しい流れ
(プラチナザール×プラチナマックスビューティ)
生涯成績 9戦1勝
1.合成1
あれはメダル牧場発足から約半S程経過した頃だろうか。すでに第3Sの種付けは一通り終え、2歳馬達の調教が始っている。すくすくと育ってはいたが、メダルとしては物足りない感があったという。「もう少し生産しておきたい」そんな想いで日々を過ごしていた。しかし、夏が近づく頃ともなれば当S用の良質繁殖牝馬等そうそうお目にかかれるものではない。そこで目をつけたのが合成による繁殖牝馬交換権である。
2.合成2
こうして見事にプラチナマックスビューティを獲得したメダル。その配合相手は豊富だが、候補に挙がった種牡馬はどれも中の上といった相手であり、選択には何か決定的な理由が欲しかった。「同様に合成で得たアウトニックス相手が面白いのではないか」こうして選ばれたのがザール(川の名、あるいはその沿岸の地域名)という得体の知れない種であった。
3.タフな子
ザールビューティの幼少期といえば、ビューティという名前とは対照的にがむしゃらに訓練を積む子だった。その努力が認められ、エリート達が訓練を積んでいるよっしー厩舎へ預託される事になり、さらなる飛躍を期待されるようになった。「丈夫な子ですので宜しくお願いします。」
余談だが、当時はメダル牧場の体力系と言えばよっしー牧場へ預託され、ウルトラタフを取得して帰ってくるのが通例であった。メダルダブルリーチ、フォルダを始めとし、無論ザールビューティにしても例外ではなく、他の馬同様にウルトラタフを取得していた。
4.成長・・・のはずが・・・
秋になり、一回り成長してメダル牧場へと戻ったザールビューティ。当時は相馬眼がいまいちだったメダルも馬を見る目が着実に備わってきていた。すべての能力を見抜いたメダルは驚愕させられる事になる。「何だこのくそパラwwwwwwww」
ザールビューティはプラチナ同士の配合だが、開けてみれば能力は初期馬と同等クラス。いくら何でもこれは・・・。周囲が肉だの刺身だのとざわつき始める。だが、そんな声にも動じずメダルは決意する。「この子を勝たせる!」こうしてザールビューティの過酷な訓練が始まった。
5.大敗
遅く産まれてきたが為に、他の2歳馬より成長の遅かったザールビューティだが、早熟タイプだった為、今後も 見据えて秋と冬に1戦ずつ使われる事となった。しかし、待っていたのは優牝クラス最下位という信じがたい結果だった。「一先ず休養し、夏まで力を蓄えよう」
6.仕上がり
3歳になって2月を迎えた頃には素質はすべて引き出されていた。牧場で買われているキリンと仲が良く、そこから走法を学んだようである。「パラは埋まったが・・・これで勝てるのだろうか?」そんなメダルの不安は的中。16頭中9着と、またしてもどうしようもない程大敗してしまう。「これはいよいよ、夏まで勝てないぞ・・・POしないでくれよ・・・」
7.記録的連闘・・・そして・・・
大敗ながらも初の一桁着順と良化の兆しを見せていたザールビューティ。上積みはないが、6月には状態が良くなっていたので出走する事となる。結果は自身最高とはいえ8着。勝利はまだまだ遠かった。すっかり体力が備わっていたので連闘するもまた8着。夏を迎え、さらに連闘が続く。5着。3着。2着。読んで字のごとく、着実に成績は上がっていく。
8.運命の日
フリレでは指数104~108を計測するも、いざレースになると90しか出せないザールビューティ。夏も終わりかけの8月3週なった頃には何と6連闘目を迎えていた。これで9戦目ながら人気は4番人気。それでも過去最高の人気だった。いつものように果敢に逃げるが、定番の逆噴射の様子はない。最後は苦しむも、見事逃げ切って1着。この時の馬主の喜びはGⅠ勝利にも匹敵するものだったという。
9.引退
過酷な連闘が災いし、引退を余儀なくされたザールビューティ。繁殖入りはしておらず、気がつけば消息不明になっていた。おそらくだが、競争生活には2度と戻るまいと思っての行動だろう。
「メダル牧場の最弱馬は?」という質問に誰もが「ザールビューティ」と答えるような競争成績だったが、ただ一つ誰にも破られていない記録がある。’’6連闘で初勝利’’これは終世まで語り継がれるべき立派な記録である。
10.美しく流れ続ける
この話にはもう一つ語っておかなくてはならないエピソードがある。というのも5Sになってザールビューティの全妹が誕生していると言うのだ。どうやら馬主のメダルはこの配合に相当な思い入れがあったらしい。つい先ほど、その仔を取材してきたので見ていただきたい。
どこかへと旅立ってしまったザールビューティもきっとこの仔の活躍を見てくれるのではないかと思う。
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