皆さんこんにちは。
笠松は6月4週を迎えております。
今日はハッピーボーナスがPOした為、予定を変更し、緊急特番「メダル牧場の名馬」をお送りいたします。
ハッピーボーナス~幾多の試練を乗り越えたハッピーホース
(キョウエイタップ×ボールドルーラー)
生涯成績 20戦14勝(GⅠ9勝)
1.略歴
毎Sのように活躍馬を送り込んでいるメダルオーナー。この春(5S当時)の活躍は記憶に新しいところだが、馬主業を開業したのは2Sも終盤を迎えて3Sに差し掛かる頃と比較的最近の事である。他の馬主に比べて準備が遅れた事を意識していた為、開業シーズンは無理をせずに翌Sの生産に備えていた。
2.キャンペーン
ハッピーボーナスの誕生を語る上で欠かせないのが二つのキャンペーンである。一つは繁殖牝馬当選確率2倍キャンペーン、もう一つが新米馬主応援キャンペーンである。前者でピーチハウス(キョウエイタップの全妹)を、後者でボールドルーラーの種付け権を得たメダルは、早速双方を配合する事を決める。こうして生まれる事になった馬こそ今回の主役ハッピーボーナスである。
3.素質馬?
生まれた当時のハッピーボーナスを見てすぐに将来の活躍を予想した者は意外に少ない。気性に若干難があり、力強さも足りないように見える。蹄の特徴もハッピーボーナスより競争に適したと思われる馬は何頭もいた程なのだ。しかし、誰にも負けないものも持っていた。それが後に最大の武器となった強い心臓である。これを最初に見抜いたのは他でもないオーナーのメダルだった。
4.出会い
気性が悪かったハッピーボーナスだが、1頭の馬との出会いが転機となる。きっかけは法改正前のルールによる運命のいたずらだった。
よっしー牧場といえば当時すでに有力牧場の一つであり、幾多の有力馬が養生されていた。法によって競走馬の管理頭数を少数に制限されていた時代であり、成長が遅い馬の価値はそれ程高くなかった。そこで、翌シーズンも多数の生産予定があったよっしー牧場は応援の意味も込めて1頭の馬をメダルにプレゼントする。
5.変化
素質があるとわかったとはいえ、弱点がある事にも変わりない。このままでは活かしきれずに終わってしまう。と考えたメダルは施設に大幅投資を行った。また、技術の高い調教助手を呼び寄せ、限界を超えそうな併せ調教を毎週のように繰り返した。また、相手にはよっしー牧場からもらった1つ年上の牝馬であるゴッドバードが選ばれた。
この時を振り返り、後にメダルは語っている「闇雲に酷使したのでは馬が潰れてしまうんですよね。最新の設備やカイバで疲労を抑えていたものです。故障だけは絶対にないように。」
これが功を奏したのか、ハッピーボーナスは次第に折り合いがつくようになった。
6.デビュー
意外に思われるかもしれないが、ハッピーボーナスは優牝競馬場でデビューを迎えている。これはメダルが10勝前後の初心者馬主だった為であり、有力馬に賞金を積ませるには絶好の条件だった。
レース内容はスタート直後から先頭を走り、そのまま逃げ切るという危なげないものであったが、相手関係を考えれば決して非凡という程の出来ではなかった。現に次走の500万下では差しきられてしまっている。この敗戦の原因として、ハッピーボーナスが未完成だった事に加えて鞍乗の福永洋十の騎乗ミスを指摘する声もあった。洋十は今でこそリーティング争いでも上位の成績をあげる天才と称されているが、この頃はデビューして間もなく、騎乗ミスが多かったのだ。それでもオーナーは洋十を乗せ続け、洋十もまた数々の好騎乗で期待に応えていった。
7.桜花賞
500万下敗戦後はフェアリーステークスに出走し、2着を確保する。この辺りから強烈な瞬発力が身につき、馬体も完成の域に近づいていた。次走はクイーンカップを予定していたが、ここで陣営にとって嬉しい誤算が起こる。滅多に人前に姿を現さないと噂されている伝説の装蹄師が現れ、装蹄してくれたのだ。その蹄鉄はディープ蹄鉄と呼ばれ、使用した馬の中には3冠馬等も含まれており、走りの安定性は随一と評判だった。
ハッピーボーナスも例外ではなく、クイーンカップは快勝だった。そしていよいよ迎えた桜花賞。しかし、出走表を見て、クイーンカップの悪夢が蘇る。「同じ枠だ・・・」あのレースは直線で明らかな不利を受けていた。直線の長い東京競馬場という事で何とか勝つことができたが、今回は阪神。東京に比べて直線は短く、内に包まれれば厳しいレースになるのは目に見えていた。
その事もあってかレース前日までは4番人気だったハッピーボーナス。しかし当日になって異変が起こる。圧倒的一番人気。ご存知のように、馬券は1人1レースにつき300万までと法律で決められているが、他人名義を利用して次々にハッピーボーナスの単勝を買い続け、最終的に3000万もの金額を買っていた人物までいたという。
レースではスタートから中段やや後方に待機。平均ペースで進み、3コーナーから4コーナーに差し掛かる。前方に壁があったが、持ち前の根性でこじあけて直線にさしかかったところで視界が開いた。そのまま一気にスパートし、わずかに抜けたところがゴールだった。
馬主と鞍乗にとってのGⅠ初制覇にしてクラシック制覇。ハッピーボーナスはとんでもない仕事をやってのけたのだ。
桜花賞制覇時のハッピーボーナスと関係者の様子
8.強心臓
桜花賞を終えて休養に入ったものの、すぐさまNHKマイルカップへの参戦が決まった。さすがに仕上がりは7分といったところだったが、ここでハッピーボーナスは桜花賞以上のタイムで優勝する。さらに勢いそのままに愛1000ギニーをも制し、春のGⅠ3連勝を飾る。大舞台に強い強心臓ぶりが如何なく発揮されたと言えよう。
9.激突
夏は休養と思われたが、次戦に選ばれたのはジャックルマロワ賞。現役最強マイラーのソウテンマイスロとの初顔合わせが控えていた。レースでは久々での出走をものともせずにハッピーボーナスが勝利した。しかし、ハッピーボーナスが万全で出走できたのに対し、マイスロは明らかに順調さを欠いていた。それでいて差はわずかなのだから、決着がついたとは言い難い。事実、マイスロはその2週後のムーランドロンシャン賞で完勝している。それも、世界レコードのおまけつきで。
10.不調
ジャックルマロワ賞の反動が思ったより大きかった事、レース直後に蹄鉄が壊れてしまった事から、ムーランドロンシャン賞を回避したハッピーボーナスは一旦休養に入り、秋初戦は毎日王冠からの始動となった。このレースでは快勝し、秋のGⅠ戦線へはずみをつけたように思えたが、相手関係にも恵まれたと見るものも少なくはなかった。ところがオーナーは中一週となるBCマイルへの出走を決断。毎日王冠の反動や海外遠征の疲れ、そして直線での不利も重なり、生涯最低の3着に敗れてしまう。仮に万全だったとしても相手があのマイスロでは勝ち目は限りなく薄かったといえよう。いずれにしてもハッピーボーナスは国内に戻って休養に出される事となった。
無事に帰国し放牧されたが、その最中にまたしても驚きのプランが発表された。帰厩後わずか1週間の調整で、マイルチャンピオンシップへ向かうというのだ。迎えた本番では勝ち馬と同タイムの2着と健闘を見せるが、勝ちタイムがクイーンカップと同タイムだった事を思えば本調子に戻ったとは言い難い。「ハッピーボーナスはここまでなのか・・・」オーナーのメダルを含めた関係者の誰もがそう思っていた。
11.現役か引退か
競走馬として完成してからすでに1S近い時間が経っていた為、残された時間はわずかと捉えられていた。その為次走は中1週でOP戦が選ばれ、難なく快勝している。ここで陣営は一つの決断を迫られることとなる。現役続行か、引退か。この時点で引退すれば1シーズン早く仔を持つ事ができる。逆に次のレースに出れば少なくとも翌Sへの持ち越しは確定。現役を続行したにも関わらず、レースで結果を残せないという最悪のケースも想定された。しかし出された結論は現役続行だった。
12.復活の予兆
現役続行表明からわずか1週間。前走から中1週で阪神カップへと出走したハッピーボーナスは最も不利とされる最内枠になってしまうも快勝した。「現役を続行した甲斐があった。後は体の持つ限り気楽にやってくれれば良い。」
阪神カップの反動が無かった為、中1週で京都金杯に出走したハッピーボーナスだが、ここで2着に敗れてしまう。これは過酷なローテーションと60kgの斤量が災いしたと言われているが、これが功を奏したのか、翌週の調教でパワーがこれまで以上に上がっている様子が見られた。その後は一旦休養し、復帰明け初戦はデビュー戦以来となる1200mのシルクロードステークスだったが、2着と健闘した。
13.路線変更
次走は意見が分かれていた。フェブラリーステークスかドバイDFか。実は前のシーズンの南部杯の時からダート挑戦へのプランはあった。しかし、あの頃のダートマイル路線は層が厚く、付け焼刃のハッピーボーナスが通用するとは思い難かった為、結局は毎日王冠が選ばれたという経緯がある。フェブラリーステークスはダート初挑戦であり、好メンバーが登録されていた為、着外に沈む事も十分に考えられた。さらに、目標となっていたドバイへの影響を考えればそのままドバイに向かった方が無難であり、どちらかと言えばドバイへ直行の意見が多かった。しかし、調教師の「京都金杯後の調教で見せたあの動き。あれが気になります。」という一言が決め手となってフェブラリーステークスが選ばれた。
芝、ダート問わずマイル路線の有力馬が揃ったレース本番。いつものように中段待機策をとり、直線一気と思われたが、ダートのせいもあってかいつものようなキレのある脚ではない。それでも1完歩ずつ差は縮まり、ハッピーボーナスがほんの少しの差で先頭になったところにゴール板があった。
現役続行、調教方法、路線変更、レース展開どれ一つが欠けても勝つことができない僅差であり、会心の勝利となった。
14.マイル女王へ
休養を経た後調整期間不足が囁かれる中、ドバイDFへ出走したハッピーボーナスはまたしても内枠を引いてしまう。ドバイとあってメンバーもレベルが高かった。「不利を受けて勝てる相手ではない。」レースではそういった陣営の想いをよそに、さほど不利を受ける事も無く完勝。鞍乗の洋十が一回り成長し、好騎乗が見られたレースであった。さらに、返す刀でチャンピオンズマイルを圧勝したハッピーボーナスは現役最強マイラーの座をかけてヴィクトリアマイルへと向かった。気になるのはレースの反動や帰国時の疲労だが、陣営は昨Sの反省を活かして調整方法を工夫していた。「最高の状態で出走できますよ」いつもは弱気なオーナーも、この時ばかりは半ば勝利を確信していた。
マイル路線のダート女王ヒトミンマリン、フェブラリーステークスの敗戦から除々に持ち直してきたソウテンマイスロら有力馬の登録もあったせいか、本番は少頭数となった。レースはややハイペースとなり、後ろで競馬をするハッピーボーナスにはうってつけの展開となった。直線ではすべての馬を差し切って優勝。世界レコードを0.1秒更新した。
15.完結
ドバイ以降放牧に出される事なく走っていたが、ヴィクトリアマイルの反動はなく、好調をキープできていた為安田記念へと向かった。ここでは絶好の大外枠を引き当て、見事に一着でゴールイン。得意の春競馬を最高の形で締めくくったと同時にマイルGⅠ5連勝の偉業を達成し、頂点に立った。
16.引退
レースから数週が経過し、ハッピーボーナスの引退が発表された。引退式は同厩馬レッドフェアリーの宝塚記念がある6月5週に行われる予定となっている。その後は繁殖牝馬としてメダル牧場で過ごす事が決まっており、その仕事に多大な期待がかけられている。
ハッピーボーナス全成績
幼少期から現役晩年まで仲の良かったハッピーボーナスとゴッドバード
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